2016/03/23

小出シンバル ファクトリーツアー イベントレポート

2016年2月28日 大阪が誇る日本唯一のシンバルメーカー「小出シンバル」工場にて、ファクトリーツアーを開催しました。


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今回の企画は小出シンバルの工場を見学しながら、代表の小出俊雄 社長にシンバル作りの秘密を解説していただく事ができるという非常に珍しいイベント!



全国から多数のご応募いただいた抽選の結果、幸運にも参加頂けた方の中には、四国や愛知県からお越しいただいた方もいらっしゃいました。
本当にありがとうございます。

集合後、以前テレビ番組で放送された小出シンバルの紹介映像で予習を行い期待も高まったところで、さっそく見学がスタートしました!



ここからは当日の流れに合わせながら、小出シンバルができるまでの過程を紹介いたします。



 ①合金の仕入れ


僕たちが日頃から目にしているシンバルの素材は銅と錫の合金からできています。

しかし、この合金は現在において一般的な工業部品として作成される事の無い非常に珍しい素材となっており、通常は手に入れる事はできません。
実は小出さんがシンバル作りを始めた当初は、海外のシンバルメーカーより材料を輸入して作成を行っていました。
しかし、年月を重ねる事でシンバル作りへの飽く無き探究心は、他のシンバルメーカーが手を出すことの少ない「素材の配合率」による音の違いにまで発展!

現在はほぼ全ての小出シンバルが、日本の銅合金を扱う特殊技術を持つ金属材料のメーカーと共同開発した「国産材」を使用し作成が行われています。


その国産金属メーカーでは、まず超高熱に加熱した高純度な合金からパンケーキのような形状のキャスト(鋳物)を作成。

このキャストを再加熱した後、ローラー型の圧延機で圧力を加えて薄く加工します。

この加熱→圧延の工程を何度も繰り繰り替えし、約1〜2mm程のシンバルに近い厚さまで加工された円形板状のブロンズが、シンバルの素材として小出の工場に送り届けられるのです。




実は小出ではシンバルの合金として最も主流となっている「銅80% + 錫20%」の配合率のB20ブロンズ以外にも、様々なハイグレード合金を使い分けているのも大きなポイント!


「銅77% + 錫23% + 微量チタン0.5% 」のB23ブロンズ
「銅78% + 錫22% + 微鉄0.5% 」のB22ブロンズなど

錫の量を極限まで上げた小出独自の素材は、音の立ち上がりが非常に良く、明るくクリアなトーンを得ることができます。


その反面、錫の量が0.5%増えるだけでブロンズは格段に硬くなり、その分だけ高い加工技術が要求されてきます。
長年の金属加工の経験を持つMADE IN JAPANの小出シンバルだから扱うことができる特別なブロンズという訳ですね!


ちなみに錫の量によりブロンズの硬さは大きく変わるのですが、
硬さが急激に変わる錫の多さのラインが16%以上となっており、これより錫が少ないと冷間圧延が可能な程柔らかく、16%を越えると熱間圧延が必要になるそうです。
高価な素材ほど手間がかかるという、仕組みになっていて面白いですね!

棚には過去の試作にも使われたであろう、様々な素材のブロンズが保管されていました。



余談になりますが、シンバルの素材となる特殊なブロンズは超伝導素材と近い配合だそうで、実際に小出シンバルのブロンズを作っている国産の金属材メーカーは、熱核融合炉などにも使われる世界最高峰の品質を持つ超伝導素材も作っているとの事。
やはり日本が誇る「ものづくり」の技術は素晴らしいです!




 ②カップ整形


こうして小出の工場に到着した高品質のブロンズに、最初に行われるのがカップの作成。
ブロンズの中央に目印を作ったのち、工場内にある専用の釜で加熱します。

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こうして温度が上がり真っ赤になり加工ができるようになったブロンズに、プレス機で型を押し当てカップの盛り上がりを作ります。


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熱せられたブロンズは瞬時に加工する必要があるので、加熱用の釜とプレス機は隣り合った場所に置かれています。
ちなみに加工時に加熱する温度は650℃~730℃となっており、錫の配合によって最適な温度が違ってくるそうです。



 ③焼き入れ


基本的な形状が出来上がったシンバルですが、この時点のブロンズは衝撃に弱く叩くとガラスのように割れてしまします。

ココは、金属組織に大きく関係する少し複雑な要素。
ちょっと工学的な難しい話になりますので、興味のない方は少しだけ読み飛ばしてく下さい。

まず、先ほどまでのように、加熱されたブロンズは高温の状態から大気に触れることでゆっくりと冷却され
α+ε(アルファ イプシロン)という組織に変化していくのですが、このα+ε(アルファ イプシロン)組織が、ガラスのように割れてしまう脆性破壊しやすい性質を持っているのです。


ここで、登場するのが「水焼き入れ」という大事な作業。
再び釜で加熱し高温になったブロンズを水の中に浸ける事で、急速冷却を行います。

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この再加熱後の急冷によりα+β(アルファ ベータ)組織という柔らかく割れにくい「バネ性」を持つ組織に変化し、常温で安定化させる事ができるのです。

こうして叩いた時に割れない十分な強度と、金属の振動にしなやかな揺れを持たせる事ができ、すべての音域でバランス良く発音する素晴らしいシンバル素材はこのように生まれます。

ちなみに水焼き入れを行うと、一般的な機械部品に使われる鋼材は硬くなりますが、シンバルのブロンズ材のように逆に柔らかくなるのは、銅ならではの特殊な性質だそうです。


衝撃に強い金属が完成したところで、次はセンターホールが開けられ、作るシンバルのサイズに合わせて切り取られます。

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小出シンバルでは精度良く正確なカットが行われますが、この段階では後の加工により大きさに多少の変化が出るため、完成時より少し大きめにカット。


 ④「へら絞り(スピニング)加工」整形


ようやくシンバルに相応しい素材に仕上がったブロンズ材ですが、この段階では全体的に歪んだ形状をしている上に、複雑な凹凸が沢山ついています。
これを平らな形状にするのが小出シンバルが長年の金属加工で培ってきた「へら絞り(スピニング)加工」
ここは他のシンバルメーカーとは大きく違う小出シンバル独自のプロセスとなっています。


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まずは、専用の金型の上に固定したシンバルを高速で回転させます。
そこに直角にローラーを押し当て圧力をかけて、凹凸を整えると同時にシンバル全体のシェイプ(角度)をつけていくのです。


このへら絞り加工は、複雑な加工になるほど人の手による微妙な調節が必要になってくる、特殊な加工とのこと。

シンバルのシェイプは最終的なサウンドに大きく影響を与えるのですが、
ここにも長年技術を磨き続けてきた小出シンバルの金属加工技術が活きています。


(ちなみに、すべての整形をハンマリングで行う703シリーズでは、へら絞りは行われません。)



その後、形状が安定したこの段階で、再び規定のサイズに正確にカットされます。

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誤差の無い正確なサイズは、ハイハットやコンサートの合わせシンバルの噛み合わせに大きく影響する、大事なポイント!



 ⑤厚さ調節


次は基本となるシェイプが完成したシンバルの厚さを調整します。

旋盤に固定されたシンバルを高速で回転させ、そこに先端に超硬質なダイヤモンドチップを取り付けた専用のブレードを押し当てて、表面を少しずつ削ってゆきます。
この時、加熱により発生したシンバル表面の黒い酸化物は削り取られ、中から光り輝く美しいブロンズが初めて姿を現すのです。


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小出シンバルでは、最初は裏側からレイジングを行い大まかな全体のウェイト調節を行います。

幅が異なる沢山のブレードを状況により使い分けながら、少しずつ削りが入れられます。
細かい調節が必要な集中力の必要な作業です。
その後、表側からも削りを入れて、最終的な厚さを調節します。

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ちなみにこの段階ではカップからエッジまで厚さに変化をつけず、表面の切り込みも溝が出ないよう平坦に仕上げるのがポイント!

というのも、この後行われるハンマリングに最適な”力加減”は、打ち込まれるシンバルの厚さにより変わってきます。
そこで、完成時のミディアムやシンといったウェイト設定に準じて全体の厚さを整えておく事で、この後の作業を精度よく進める下準備ができるそうです。
他の大手メーカーではあまり見かけない、加工精度に拘る小出ならではの作業順序ですね!



 ⑥ハンマリング



この後がシンバルの音を調節する、非常に大事な行程「ハンマリング」です。
単一な素材である金属にハンマーを打ち込む事で、しなやかな素材に生まれ変わり、振動も大きくなり、音色をコントロールする事ができます。


小出シンバルでは特注で作成した専用のハンマリングマシンを使用してハンマリングを行います。
打ち込むハンマーの形、強さを細かく設定した上で、作成するシンバルごとに決まられた所定のポイントに手で場所を調節し、テンポ良くハンマーが打ち込まれていきます。



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同じ素材、同じ厚さのシンバルでもハンマリングの入れ方一つで音が大きく変わってくる大事な作業。
職人技による微妙な調節と集中力が必要となっています。

また、マシンでは行えない細かい部分は微妙な力加減をコントロールしやすいハンドハンマーで調整を行います。
必要な場所を瞬時に見極めながら、重量のあるハンマーで安定したハンマリングを行うには相当な技術が必要です。




加工を行った後のシンバルは、水平な台と角度を確認する専用のゲージを用いて、歪みやズレが無いかを確認。
完璧な形に仕上がるまで、ハンドハンマーで何度も修正が加えられます。


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ハンマーを入れる場所は、完成時にトーンがしっかりと出やすくなる性質があるそうで、振動の早い内側を多く叩くと高音が目立ち、振動の遅い外側を多く叩くと低音が出てくるとの事。
さらにハンマー形状の選択でトーンを柔らかくする事も、硬くすることも自在にコントロールができるるそうです。

また、ハンマーの入れ方で音の伸び方もコントロールする事ができるとの事で、適度な早さで減衰が必要なクラッシュ系のシンバルなどは、使用する金属の錫の配合による音響特性毎に最適化されたハンマリングが採用されています。

このハンマリングのレシピは、アーティストとの意見交換と数限りない試作、実験、検証の繰り返しにより生み出された、小出シンバルの貴重な宝ですね。



小出シンバルでは作成する各シリーズごとに使用するハンマーが分けられており、これによりトーンに大きく個性を持たす事ができ、プレーヤーに合わせた様々なサウンドのバリエーションを実現させています。
また、纏まりが良くコントロールしやすいサウンドの808、609シリーズでは表面から、しなやかで柔らかいサウンドを求める10Jシリーズでは表裏両面からと、シンバルに求めるキャラクター毎に加工方法を変えられています。


(808シリーズ写真)
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(609シリーズ写真)
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(10Jシリーズ写真)
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さらにオールドのターキッシュシンバルのサウンドを追求した703シリーズでは、絞り加工を行わずハンマリングのみで整形、チューニングを行い、深くダークなサウンドを作り出しています!

(703シリーズ写真)
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 ⑦金属安定化のための保管


ハンマリングが終わり、勢いよく最終工程に進みたいところですが、残念ながらそうはいきません。
なぜなら、この段階ではシンバルのブロンズが綺麗に鳴ってくれないのです。


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これは、ハンマリンングで手を加えられたシンバルは金属の組成が安定していない事が原因となっており、立ち上がりが良くて、明るく響くサウンドが得られるためには、シンバルを一定の期間”寝かせる”必要があるのです。


ちなみにサウンドが安定するまでに必要な時間は、ブロンズの配合により変わってくるとのことで、錫を多く含む素材程、サウンドの完成に要する時間は短くなるそうです。

センシティブシリーズなどのクラシックシンバルに使用する、立ち上がりが抜群に早く明るいトーンの、錫23%を含むB23ブロンズは最短で一週間。
ドラムセット シンバルに使用されるバランス良い鳴りが特徴の、錫20%を含むB20ブロンズは平均で1ヶ月。
ハンドシンバルや503シリーズに使用されるソリッドなサウンドの錫8%を含むB8素材は、約3ヶ月と大きく差が出てきます。


いやはや、シンバルって本当に不思議ですね!



 ⑧レイジング(音溝入れ)


一定期間寝かせることで、サウンドが安定化したシンバルは、次なる大事な行程「レイジング(音溝入れ)」に入ります。
瞬時の判断で細かい調節が必要とされるレイジングも、小出さん自身の手による匠の技の出番!
再びシンバルを旋盤に固定し回転させながらブレードを押し当てて削り、厚さ調節と同じ要領で表面に溝を入れてゆきます。また、カップ、ボウ、エッジの各ポイントでの厚さのバランスも、この時の削りの入れ方で調節されています。


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少しずつ削っては、重さとカップからエッジまで各ポイントでの厚さを測定するという、細かい作業を繰り返す、時間と根気と体力の必要な作業です。

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小出シンバルでは作るシンバルの種類により、重さと、厚さのバランスが明確に決められており日本製ならではの細かい品質管理が行われています。

ちなみにシンバルをスライドさせながら、各ポイントの厚さを高い精度で計測する事ができる専用の厚さ測定器もシンバル作成の為に作った特注品だそうです。

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全ての製品に高い精度を誇る小出シンバルの製作の為に、必要な大切な道具にも拘っています!




 ⑦ロゴ入れ 完成

レイジングが終わり、サウンドチェックが行われ晴れて合格したシンバルはロゴが入れられ、ついに完成!
たくさんの小出シンバルファンのもとへと、旅立って行くのです。



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こうしてシンバル作りの一連の流れを見学しながら説明したところで、ファクトリーツアーは一段落。
最後にどらむ村スタッフが小出シンバルの各ラインアップの特徴を説明したのち、シンバルに関する日頃の疑問などを相談するディスカッションを経てイベントは終了いたしました。

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さらに、本編終了後は特別に様々なシンバルを叩き比べる時間もご用意。
目の前で作られていった小出のシンバルが持つサウンドの魅力を、じっくり体感していただきました。

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皆様、長時間に渡りお付き合い頂き、ありがとうございます!


小出シンバルのラインナップは、こちらでチェック!






こうして、ファクトリーツアーは全行程が終了。
10年以上、毎日シンバルに携わってきたドラム専門店 スタッフの私も初めて聞くような、マニアックな話が次々と飛び出してくる中身の濃いイベントとなりました。
本当に楽しかったですね!

最後になりますが、今回の小出イベントを快く引き受けていただいた小出俊雄 社長、
イベント中の商品解説に使用した資料をご提供いただいた、コマキ通商 様
告知にご協力いただいたASA-CHANG様、ウルフルズのサンコンJr.様、東京スカパラダイスオーケストラの茂木欣一様の小出シンバル アーティストの皆様、
そしてイベントにご参加頂いた皆様、本当にありがとうございます。

また、時期を見て面白いイベントを企画しようと思いますので、今後ともドラムショップ ACTをよろしくお願い致します。

http://www.drums.co.jp

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2016/03/14

小出シンバル ハンマリングワークショップ イベントレポート

2016年2月28日 大阪が誇る日本唯一のシンバルメーカー「小出シンバル」工場にて、ハンマリング ハンマリングワークショップを開催いたしました。




今回のイベントは、沢山のお客様よりリクエストを頂いていた企画!

どらむ村スタッフと小出シンバルの代表 小出俊雄 社長さんとで、何度も打ち合わせを行い遂に実現したこのイベントは全国より沢山の参加ご応募を頂きました。

小出社長ありがとうございます!



今日はイベント当日の様子を少しだけレポートさせて頂きます!

今回のハンマリング ワークショップは、小出シンバルの小出俊雄 社長ご自身にシンバル作りのメインとも言える大事な行程「ハンマリング」の極意を伝授してもらい、さらに参加者様ご自身の手で、本格的にハンド ハンマリングを施してシンバルを作って頂くという、大変珍しい企画です。



さらに、作っていただいたシンバルはお持ち帰りいただけるというビッグな特典も付いています!
当然、ご参加いただいた参加者様はシンバル作成は初めての方ばかり。
関西圏在住の方以外にも、なんと、このワークショップの為に金沢からご参加いただいた方もいらっしゃいました。

まず、簡単な自己紹介の後、早速工場に移動し作業スタート!

今回はシンバルの素材として最も代表的なB20ブロンズ(銅80%+錫20%の合金)を用い
ハンマリングによって全体の形状から作ってゆく最もトラディショナルな作業工程で、
18”のクラッシュ ライドの作成に挑戦していただきました!




作業前の素材はカップ部分が盛り上がっているだけの、円形の金属の板のような形。
何度も熱処理を行っているので表面は焼き焦げたようになっています。



この金属の板にハンマーを打ち込んで形を作り、シンバルの形に整えていくわけです。


①全体のカーブ作成

まずは、表面からボウの部分にハンマーを打ち込んで、シンバル全体の形状作り!

ハンマーを打ち込まれた部分は金属が少しだけ伸びて、局所的に広がりが生まれます。

これを繰り返すことで素材全体が反ってきて、シンバルに必要なカーブ(全体の傘型形状)を作ることができるのです。

ちなみに、ハンマーで打つと言ってもガッツリと握り込んで叩いていては、とてもじゃないですが振動で手がもちません。イメージ的にはドラムのストロークによく似ていて、上からハンマーを落としシンバルに当たってから握り込んでキャッチする感覚でハンマリングしていきます。



また、シンバルを乗せる金属台の同じ部分を打つイメージでハンマーを打ち、シンバルの方を動かして打つ場所を変えていきます。



素材の板の面に対してハンマーの打面が並行に当たるように正しくハンマーできると、「カン!」というクリアな音になるので、最初はこの音が安定して出せるように意識して加工を続けていきます。

これだけでも結構難しいんですよ!

途中、工場見学も交えながら作業は続てゆくと、平かったシンバルの素材は通常のシンバルとは逆の方向に、みるみる反り返ってきました。




②曲げ直し加工

ここで、あまり反り返る角度がキツくなってくると、台に乗せにくく作業も困難になるので、
シンバルに力を加えて、通常のシンバルのカーブがついている方向に曲げ直します。



写真のように専用の台に固定して、手前に引っ張ることで逆方向に反った形状を修正していきます。

B20ブロンズ製のシンバル材はとても弾力に富んだ”しなやか”な性質を持っており、意外なほど簡単に曲げ直すことができますね。

参加者の皆さんも最初は恐る恐る引っ張っていましたが、最後には勢いよくスピーディーに曲げ直していました。

この時、通常のシンバルと同じ向きに曲げ直されても、ハンマリングで局所的に変形した部分は型がついて角度が保たれるので、全体的に少しずつシンバルっぽい傘型の形状が出来上がってくるのです。

このように表からのハンマリングを全体的にまんべん無く均等に行い、順方向に曲げ直していくことで、シンバルに必要なボウ部分の反りをしっかりと作ることができるのです。

ちなみにハンマーを入れる場所は、完成時にトーンがしっかりと出やすくなる性質があるそうで、振動の早い内側を多く叩くと高音が目立ち、振動の遅い外側を多く叩くと低音が出てくるとの事。
形状的にも真ん中を多く叩くと、クラッシュによく見られる傘型に近い急角度なフォルムを作る事ができて、高音が目立ってきます。面白いですね!


③仕上げ整形

こうして全体のフォルムが完成してきたら、次は全体の形状を整えていきます。

まず、シンバルの理想的なカーブに切り取られたスケールをシンバルに当てて形状を確認。



さらに、水平な金属台の上に乗せ、エッジに浮きがなく均等に乗っているかを確認します。



ここから全体を手で触って凹凸を確認し。
状況に応じて表、裏からハンマーを入れて、全体の形状にムラが出ないように整えていきます。



この段階まで来ると繊細な加工が要求されるので、ハンマーもストロークを小くし丁寧に打ち込まれていきます。

この難しい加工も小出さんの素晴らしい指導のおかげでスムーズに進み、皆さんイイ感じに整ったシンバルを作ることができましたね。




④レイジング

ハンマリングの次は音溝を掘っていく「レイジング」の工程に移ります。

旋盤に固定したシンバルを高速回転させ、そこにブレードを押し当ててシンバルを削っていきます。



レイジングは音に大きな影響を与える上に、やり直しのできない熟練の技術が必要な作業ということで、今回は小出さんに加工をお願いしました。



理想とするサウンド、お持ちのシンバルとの相性を参加者さん、小出さん、どらむ村スタッフでディスカッションしながら、目標の厚さ、重さなどを決定し、小出さんの丁寧なレイジングでシンバルが仕上げられます。




ハンマリングしたシンバルが仕上げられていく工程を見守る、参加者の皆さんの視線も真剣そのものであります!




⑤完成

こうして約3時間にわたる作業の末、ようやくシンバルが完成!



どのシンバルも綺麗に仕上がっています。

せっかくですので、皆さんに完成したシンバルを試奏して頂きました。
皆さんようやく自分で作ったシンバルを叩く事ができ、感動もひとしおです!



とは言ったものの、実はハンマリングしたてのシンバルは金属が安定しておらず、すぐには綺麗な響きでは鳴ってくれません。

ここから、少しずつ時間が経つことにより、最初のこもった感じがなくなってきて明るさを増し、立ち上がりの良い素直な美しいサウンドに変化してきます。


B20材シンバルのサウンドが安定するまでには、なんと1か月もかかるそうですが、作りたてのシンバルを持って帰って、少しずつ音が完成していく様子を聴き比べれるのも、このワークショップならではですね。

最後は皆さん完成したシンバルを手にして記念撮影!



皆さん長時間の作業お疲れ様でした!ご参加ありがとうございます!

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